海猫屋の客/ケーキ工房のモンブラン
2005年5月21日◆『海猫屋の客』を読んで
『海猫屋の客』は、小樽の現存するカフェレストラン
「海猫屋」を舞台とした海猫屋のマスターと、謎の男女の客、
そして小樽の人々の郷愁漂う物語である。
先週小樽に行った時に訪れたのが、この「海猫屋」であり、
「海猫屋」のレジ横などでこの本が飾られていた。
で、とても気になって、東京に戻ってからすぐさま探し、
文庫を購入した。
海猫屋の建物は、明治時代くらいからの赤煉瓦の建築物であり、
その建物の由来について、店の入り口横に小樽市が
とりつけられた看板をそのマスターが読むあたりから
この物語はスタートしている。
薄汚れた店でグラスを傾けちゃう感じ。
剥がれ掛かったポスターが貼ってありそうな感じ。
果たしてこの店、経済的に成り立つのかといったような、
一種独特の胡散臭さとともに、でも、心落ち着く空間である
ことをこの物語では語られている。
そして、この店に来て、はじめは違和感を感じても、
心落ち着く人は、どこかアウトローな感じで、
自分がマスではないと悟っている人たちである。
何か訳ありな人たちが磁石のように吸い寄せられていくような
感じなのである。
そうした店を舞台に、怪しくもやさしい日々が過ぎていき、
やがて、1人1人の素性が明らかになり、事件が起きていく。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
個人的には、全体のまったりとした描写がたまらなかった。
先週のこの日に、かの地を訪れ、実在する「海猫屋」を
訪れた者として、一種格別な思いで、この本を読んだ。
いっぺんに読んでしまうのは、なんだかもったいない気さえ
して、会社の行き帰りの地下鉄で、少しずつ読むことにした。
そして、最後は一気に昨晩寝る前に読んだ。
後半ある展開があるのだが、そこがあまりにも急展開で、
残念ではあったが、全体的には、店の雰囲気がいかんなく
伝わってきて、またあの空間に戻りたい気持ちになった。
あの「海猫屋」にいたときの何とも言えないまったりとしていて
それでいて、落ち着く気分というのは、日常生活において、
そうなかなか、味わえないものである。
σ(^_^)の日常にとっての「海猫屋」的存在は、
日頃我が日記に登場するケーキ工房で語らうひとときかも
しれないし、新宿某店で大きな心で物事を受け止めてくれる
マスターと悠長に語りあうひとときなのかもしれないが、
やはり、「海猫屋」は「海猫屋」なのであり、唯一無二である。
そういえば、海猫屋に行った時に来店した著名人の写真が
アルバム数冊にまとめられていて、
それを見る機会があったのだが、
その1人が近藤房之助さんだったのは、
なんだか妙に納得がいってしまった。
小樽・海猫屋・ブルース・・・つながるなあと思った。
◆ケーキ工房のモンブラン
今日は、ケーキ工房の日替わりメニューはモンブランであると
連絡を受けたので一つ予約をしておいた。
毎回、普段よりも数量を限定して作られているモンブランで
このケーキ工房では、大人気メニューの一つである。
このモンブランには、特別な思い入れがある。
ケーキ工房は、今では、3階建てのきれいな家の1階部分が
工房とカフェになっているが、かつては、通りに面した
駐車場から少し入った工場の倉庫のようなところの2階の
やや奥にあった。
店の入り口は、言われてみれば看板がかけられているけど
たいていの人は見逃してしまう。
見逃してくれてちょうどいいくらいというところにあった。
σ(^_^)も知人に紹介され、初めて行ったときは、
本当にここでいいのかとさえ、思ったくらいだった。
工場の倉庫の脇にあった古い階段を上っていくと、トントンと
自分の足音がやたら響くのである。
そして2階について、意を決してドアを開くとそこは、
菓子工場の段ボールやらなにやらが積んであるところで、
やはりここは違うのか・・とさえ思わせてしまうところである。
ただ、よく見渡すと中央奥に、スリッパがいくつか置いてあり、
そこに何足か靴も脱いであったりする。
もしかしたらここか?と思いつつ勇気をふりしぼっていくと、
真ん中にドアがついている。
ただし、向こうの様子は見えない。
そしてさらに意を決してスリッパを履いてドアを開けると、
右側には、調理工房という感じの大きなキッチンがあり、
左手奥にいくつか食卓テーブルが2,3組あったりする。
しかもその手前のテーブルは、ボールとか計器とか調理器具が
置いてあって雑然としている。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ケーキ工房の彼女とは、当時の行きつけの飲み屋で知り合った。
その時、半ば酔っぱらっていた彼女は、可愛い声で
「わたし、ケーキ工房やっているんです」と言った。
同世代で小柄な彼女が1人でやっているというのは、
経済的にも物理的にも、どう考えても無理だろうし、
飲み屋で酔って、夢を語っているのだと思った。
(その当時、その店には、夢を語っている人が
けっこういたからというのもあるが・・・)
20代後半の女性がケーキ工房をやりたいというのは、
夢としては大いにあり得るし、立派だと思うからである。
その旨を伝えると、いや、本当にやっているのだと言う。
それなら今度行きますよ。と言い、彼女に地図を書いてもらって
数日後に行ったのが、上記に書いた様子である。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
彼女は、「本当に来て下さったのですね」と言い、
優しく歓迎してくれた。σ(^_^)は先日の非礼を述べ、
「本当にやっていたんだ!!」と感激した。
はたして彼女は細腕一本で、ケーキ工房をやっていたのである。
そして、最初に食べたケーキは何であるか失念してしまったが
とにかくうまいのである。なんだ、この重層構造のケーキは!!
今まで単純なつくりのケーキしか食べたことがなかった
σ(^_^)にとっては、驚きであった。
そして、一緒に入れてくれた紅茶もおいしかった。
ひとしきり、彼女と話して帰ろうとしたら、
焼菓子も売っていることを知り、
家族のお土産に買っていった。
それが「フィナンシェ」であった。
帰宅して家族もびっくり!!
こんなにうまい焼菓子が、我が家の近所で作っているのかと!!
それから常連化していった。
そんなある日のこと、彼女のお父さんとお会いした。
(お父さんも花林糖などをつくっていた)
お父さんは、秋になると、娘のケーキのために、
モンブランの栗の裏ごしをしているんですと言った。
それは楽しみですね!!と言い、そしてその秋に、
お父さんと娘の共作のモンブランをいただいた。
そのモンブランは、どんな名店で頂くよりもおいしいと思った。
そして、しばらくして、そのお父さんの具合が悪いことを
知らされた。入院して一度戻って来た時は、
やつれてはいたけれど、素敵な笑顔を見せてくれたのだが
それからまた具合が悪くなってしまい、
ついには帰らぬ人となってしまった。
そして、今のケーキ工房があるのである。
最近のお客さんは、そのことを知らない。
「モンブラン、おいしいね」と何事もなかったかのように言う。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
このモンブランの話を知っていて、その当時のモンブランを
食べて今も食べているσ(^_^)にとっては、
特別な思い入れのあるモンブランである。
<今日の歩数>9762
カウンター:68567(+33)
『海猫屋の客』は、小樽の現存するカフェレストラン
「海猫屋」を舞台とした海猫屋のマスターと、謎の男女の客、
そして小樽の人々の郷愁漂う物語である。
先週小樽に行った時に訪れたのが、この「海猫屋」であり、
「海猫屋」のレジ横などでこの本が飾られていた。
で、とても気になって、東京に戻ってからすぐさま探し、
文庫を購入した。
海猫屋の建物は、明治時代くらいからの赤煉瓦の建築物であり、
その建物の由来について、店の入り口横に小樽市が
とりつけられた看板をそのマスターが読むあたりから
この物語はスタートしている。
薄汚れた店でグラスを傾けちゃう感じ。
剥がれ掛かったポスターが貼ってありそうな感じ。
果たしてこの店、経済的に成り立つのかといったような、
一種独特の胡散臭さとともに、でも、心落ち着く空間である
ことをこの物語では語られている。
そして、この店に来て、はじめは違和感を感じても、
心落ち着く人は、どこかアウトローな感じで、
自分がマスではないと悟っている人たちである。
何か訳ありな人たちが磁石のように吸い寄せられていくような
感じなのである。
そうした店を舞台に、怪しくもやさしい日々が過ぎていき、
やがて、1人1人の素性が明らかになり、事件が起きていく。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
個人的には、全体のまったりとした描写がたまらなかった。
先週のこの日に、かの地を訪れ、実在する「海猫屋」を
訪れた者として、一種格別な思いで、この本を読んだ。
いっぺんに読んでしまうのは、なんだかもったいない気さえ
して、会社の行き帰りの地下鉄で、少しずつ読むことにした。
そして、最後は一気に昨晩寝る前に読んだ。
後半ある展開があるのだが、そこがあまりにも急展開で、
残念ではあったが、全体的には、店の雰囲気がいかんなく
伝わってきて、またあの空間に戻りたい気持ちになった。
あの「海猫屋」にいたときの何とも言えないまったりとしていて
それでいて、落ち着く気分というのは、日常生活において、
そうなかなか、味わえないものである。
σ(^_^)の日常にとっての「海猫屋」的存在は、
日頃我が日記に登場するケーキ工房で語らうひとときかも
しれないし、新宿某店で大きな心で物事を受け止めてくれる
マスターと悠長に語りあうひとときなのかもしれないが、
やはり、「海猫屋」は「海猫屋」なのであり、唯一無二である。
そういえば、海猫屋に行った時に来店した著名人の写真が
アルバム数冊にまとめられていて、
それを見る機会があったのだが、
その1人が近藤房之助さんだったのは、
なんだか妙に納得がいってしまった。
小樽・海猫屋・ブルース・・・つながるなあと思った。
◆ケーキ工房のモンブラン
今日は、ケーキ工房の日替わりメニューはモンブランであると
連絡を受けたので一つ予約をしておいた。
毎回、普段よりも数量を限定して作られているモンブランで
このケーキ工房では、大人気メニューの一つである。
このモンブランには、特別な思い入れがある。
ケーキ工房は、今では、3階建てのきれいな家の1階部分が
工房とカフェになっているが、かつては、通りに面した
駐車場から少し入った工場の倉庫のようなところの2階の
やや奥にあった。
店の入り口は、言われてみれば看板がかけられているけど
たいていの人は見逃してしまう。
見逃してくれてちょうどいいくらいというところにあった。
σ(^_^)も知人に紹介され、初めて行ったときは、
本当にここでいいのかとさえ、思ったくらいだった。
工場の倉庫の脇にあった古い階段を上っていくと、トントンと
自分の足音がやたら響くのである。
そして2階について、意を決してドアを開くとそこは、
菓子工場の段ボールやらなにやらが積んであるところで、
やはりここは違うのか・・とさえ思わせてしまうところである。
ただ、よく見渡すと中央奥に、スリッパがいくつか置いてあり、
そこに何足か靴も脱いであったりする。
もしかしたらここか?と思いつつ勇気をふりしぼっていくと、
真ん中にドアがついている。
ただし、向こうの様子は見えない。
そしてさらに意を決してスリッパを履いてドアを開けると、
右側には、調理工房という感じの大きなキッチンがあり、
左手奥にいくつか食卓テーブルが2,3組あったりする。
しかもその手前のテーブルは、ボールとか計器とか調理器具が
置いてあって雑然としている。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ケーキ工房の彼女とは、当時の行きつけの飲み屋で知り合った。
その時、半ば酔っぱらっていた彼女は、可愛い声で
「わたし、ケーキ工房やっているんです」と言った。
同世代で小柄な彼女が1人でやっているというのは、
経済的にも物理的にも、どう考えても無理だろうし、
飲み屋で酔って、夢を語っているのだと思った。
(その当時、その店には、夢を語っている人が
けっこういたからというのもあるが・・・)
20代後半の女性がケーキ工房をやりたいというのは、
夢としては大いにあり得るし、立派だと思うからである。
その旨を伝えると、いや、本当にやっているのだと言う。
それなら今度行きますよ。と言い、彼女に地図を書いてもらって
数日後に行ったのが、上記に書いた様子である。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
彼女は、「本当に来て下さったのですね」と言い、
優しく歓迎してくれた。σ(^_^)は先日の非礼を述べ、
「本当にやっていたんだ!!」と感激した。
はたして彼女は細腕一本で、ケーキ工房をやっていたのである。
そして、最初に食べたケーキは何であるか失念してしまったが
とにかくうまいのである。なんだ、この重層構造のケーキは!!
今まで単純なつくりのケーキしか食べたことがなかった
σ(^_^)にとっては、驚きであった。
そして、一緒に入れてくれた紅茶もおいしかった。
ひとしきり、彼女と話して帰ろうとしたら、
焼菓子も売っていることを知り、
家族のお土産に買っていった。
それが「フィナンシェ」であった。
帰宅して家族もびっくり!!
こんなにうまい焼菓子が、我が家の近所で作っているのかと!!
それから常連化していった。
そんなある日のこと、彼女のお父さんとお会いした。
(お父さんも花林糖などをつくっていた)
お父さんは、秋になると、娘のケーキのために、
モンブランの栗の裏ごしをしているんですと言った。
それは楽しみですね!!と言い、そしてその秋に、
お父さんと娘の共作のモンブランをいただいた。
そのモンブランは、どんな名店で頂くよりもおいしいと思った。
そして、しばらくして、そのお父さんの具合が悪いことを
知らされた。入院して一度戻って来た時は、
やつれてはいたけれど、素敵な笑顔を見せてくれたのだが
それからまた具合が悪くなってしまい、
ついには帰らぬ人となってしまった。
そして、今のケーキ工房があるのである。
最近のお客さんは、そのことを知らない。
「モンブラン、おいしいね」と何事もなかったかのように言う。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
このモンブランの話を知っていて、その当時のモンブランを
食べて今も食べているσ(^_^)にとっては、
特別な思い入れのあるモンブランである。
<今日の歩数>9762
カウンター:68567(+33)
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